儒教文化測定の試み
君塚大学(佛教大学)
(報告要旨)
1 儒教文化測定の意義
- 先例寡少(と管見のかぎりでは見える)。cf. 楊国枢 et al.
- 東アジア社会意識論で、儒教文化を見なければほとんど無意味な議論に墜す。
社会構造・意識変動を社会構成=3層4領域モデル(報告者の、いわば勝手な解釈図式)で考察する場合には,とくに儒教文化への注視が必要。
3層;表層(行動)、中層(制度)、深層(価値・文化)[⇔儒教文化]
4領域;経済、政治、 統合・連帯、生活世界
- そしてグローカライゼーションの下での東アジアの問題性、特に中国の動向を、S.Huntington 的言説と対質しつつ、洞察するためには、儒教文化の持続と変容を「没主観的」に計測することが、まずは緊要。
2 本報告は、その初歩的試行。(試験的な尺度構成と測定)
3 尺度構成
1)「日本・韓国・中国の青年層の生活と社会意識に関するアンケート」(1999年実施)を利用
2)4領域ごとの尺度と、総合的尺度を作る。
儒経済文化尺度
儒政治文化尺度
儒統合文化尺度
儒生活世界文化尺度
儒文化尺度
4 これらの尺度を使い、5地域を測定、比較。
儒文化(総合); 京都≪大邱全州<北京職青年<北京学生≪河南山東
儒経済文化; 京都≪大邱全州<北京職青年<河南山東≒北京学生
儒政治文化; 京都<大邱全州<北京学生<北京職青年≒河南山東
儒統合文化; 京都≪北京職青年≒北京学生≒河南山東<大邱全州
儒生活世界文化;京都<北京職青年<大邱全州<北京学生<河南山東
(≒はW検定で有意差なし)
5 考察少々
1) 大邱全州では、儒的統合文化が顕著に持続。標準化された測定値の平均で比較すると、政治<経済<生活世界<統合 といった順。ほぼ予想どおり。京都でも、経済<統合<政治<生活世界 で、ほぼ予想どおり。
2) しかし北京学生、北京職青年、河南山東では経済がかなり儒的。逆に統合、生活世界が非儒的。予想(仮説)どおりではない。革命の影響か。
3) 「後発非西洋社会の近代化」論に修正を迫る?
4) 中国型近代化コースで脱儒か。データからは都市化、教育要因が浮上。
第12回研究大会のトップページに戻る