シンガポール華人青少年にみられる英文名の流行
合田美穂
(甲南女子大学・シンガポール国立大学)
現在、多くのシンガポール華人(特に青少年)は、日常生活の中で英文名を使用している。植民地時代の華人社会では、カソリックやプロテスタントの信者でクリスチャンネームを持つ者、海峡植民地生まれの英語教育を受けた者、植民地政府にて仕事をしている者以外では、英文名の使用は普遍的ではなかった。シンガポールが1959年に自治権を獲得した頃から、英語教育が推進され、それとともに、これまで優勢であった華文学校に取って代わって、英文学校が増加し、国民の英語化が進行した。それによって、英文名を含めた多くの欧米文化がシンガポールに浸透した。特に、近二十年間で、日常生活で英文名を使用する華人が急増している。本研究では、以上の状況をふまえて、以下に述べる4つの問題についての考察を行うことを目的としている:
1)シンガポール華人社会における英文名の増加の背景はどのようなものであるか。
2)シンガポール華人の英文名使用の実態はどういったものであるのか。
3)シンガポール華人の英文名使用と英語教育には関係があるのか。
4)英文名使用からみられるシンガポール華人アイデンティティとはどのようなものか。
本研究は、以下の内容によって構成されている:
T,研究課題及び研究方法
U,英文名使用の歴史的背景
1,植民地時期
2,自治独立以降
V,シンガポール華人と英文名
W,英文名の使用状況
1,青少年の英文名使用率
2,大学生の英文名使用率
3,大学生の英文名に対する意識
4,英文名使用と英語教育との関係
X,英文名使用とシンガポール華人アイデンティティ
本研究で用いた調査方法は、主にアンケート調査、データ収集および聞き取りである。
アンケート調査に関しては、1997年に、シンガポールに居住する30歳以下の華人青少年1000人を対象にアンケート形式による英文名の使用に関する調査票を配布し、713人より回答を得た。これら713人は、年齢、学歴、職業により、小学校6年生88人、中学生34人、大学生・大学院生302人、社会人289人に分類した。データ収集に関しては、2000年及び2001年に、シンガポール国立大学文学部に所属する学生527人から、英文名に関するデータを収集した。その他、『LOW KAR TIANG EDS, WHO'S WHOIN SINGAPORE,WHO'S WHO PUBLISHING , 2000』の498名のシンガポール華人を対象に、英語教育と英文名使用の関係について考察を行なった。
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